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2つの治療でパワーアップ!――脳卒中の救急医療

脳神経内科 山村 修 講師 濱野 忠則 科長・准教授

脳卒中の救急医療に力を入れています!

福井県内では年間約800人が脳卒中で亡くなっており、県内の死亡者全体の約9.1%を占めています。また県内では毎年約1300人の方が脳卒中を発症し、1日約2000人が脳卒中治療を受けておられます。

当院は、脳卒中の救急搬送を積極的に受け入れています。発症3日以内の急性期脳卒中患者さんの入院は、年間200人を超えました(2016年度)。病院を挙げて、脳卒中の診療強化を図っています。

新たな治療――血栓溶解療法と血栓除去療法

脳卒中全体の6割を占めるのが「脳梗塞」です。脳梗塞は、脳に栄養を送る動脈に血栓(血の塊)が詰まることにより発症します。ひとたび血栓が詰まると、脳細胞は数時間のうちに死んでしまいます。このため、治療の成否はいかに早く血栓を取り除くかにかかっています。詰まった血栓を素早く取り除く方法は2つあります。

  1. 血栓溶解療法:血栓を強力に溶かす酵素(組織プラスミノゲン活性化因子:tPA)を静脈から注射します。
  2. 血栓除去療法:太ももの付け根から挿入した太い管(カテーテル)を詰まっている血栓の近くまで進め、先端から螺旋状(らせんじょう)のワイヤーや金網を出して引っ掛けたり、ポンプで吸い出したりして取り除きます。

写真 血栓除去療法
左:血栓除去療法の実施風景、右:取り除かれた血栓

当院は2つの治療を積極的に行っており、2016年度のtPA治療は33件、血栓除去療法は10件で、年々増加しています。

脳卒中の初期治療は時間が勝負!

2つの治療法はともに大きな効果を持ちますが、tPA治療は発症から4時間30分以内、血栓除去療法は8時間以内でしか使えません。検査や説明などに約1時間を要しますので、できるだけ早く来院されることが望ましいです。

当院は、脳神経外科専門医8人(うち脳神経血管内治療専門医2人)、脳神経内科専門医7人、脳卒中専門医5人と県下随一の専門医を揃え(2017年度)、経験豊富な救急部医師との連携のもと、より多くの脳卒中患者さんをより迅速に受け入れるよう、診療体制を強化しています。また病棟では、脳卒中認定看護師や神経系専門理学療法士が活躍し、一丸となって患者さんの後遺症の軽減に努めています。脳卒中は「突然の発症」が特徴で、その治療は時間が勝負です。脳卒中を疑う代表的な症状は①顔の麻痺、②腕の麻痺、③言葉の障害です。1つでもお気づきの際は、発症時間をご確認の上で、1分でも早く来院してください。