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間質性肺炎の最新治療

呼吸器内科 梅田 幸寛 副科長・助教 石塚 全 科長・教授

間質性肺炎とは

肺はスポンジのように空気を入れる肺胞という細かい部屋が無数にあります。肺の中に空気を大きく取り込んで吐き出すために、肺は非常に柔らかく伸縮します。間質性肺炎では肺胞の壁(間質)に慢性的に炎症を起こし、線維が沈着し厚く硬くなり、本来、柔らかく大きく膨らむ肺がガチガチになり膨らみにくくなる病気です。50歳以上の方に多く、主な症状は空咳(からせき)や運動したときの息切れです。

間質性肺炎は一般的に慢性・進行性です。その中で最も頻度(ひんど)の多い特発性肺線維症(とくはつせいはいせんいしょう)という病気は呼吸不全の進行のため、診断後からの平均余命が3~5年程度とされており、国の指定難病となる疾患です(写真)。

写真 正常(上)と比べ、特発性肺線維症(下)のCTでは肺に無数の穴が開き壊れている

間質性肺炎の大きな問題は、風邪(かぜ)などをきっかけに急激に病状が悪化し、治療を行っても呼吸不全が進行し非常に致死率の高い病態になることです。このような病態を「急性増悪」と呼び、その頻度は年間5~10%程度とされます。急性増悪は間質性肺炎による死亡の大きな要因となっており、発症抑制ができる治療法が望まれています。

間質性肺炎の最新の治療――抗線維化薬

間質性肺炎の中で頻度の高い特発性肺線維症は、これまで有効な治療法が乏しく不治の病とされていました。しかし、期待される治療薬として2008年にピルフェニドン、2015年にはニンテダニブという抗線維化薬(こうせんいかやく)が認可されました。これらの薬剤を服用することで肺が硬くなることを防ぎ、経年的な肺活量の減少を抑制する効果が報告されています。さらに、最近の報告ではこれらの薬剤を内服することで生存期間が延長することが証明されました。また、ニンテダニブには急性増悪の発症抑制効果が報告されており期待されています。これらの治療薬は病気を元に戻すことはできませんので、病気が軽いうちに発見し内服を開始した方が有効でしょう。

抗線維化薬はそれぞれ特徴的な副作用があり、ピルフェニドンは光線過敏症という日焼けしやすくなる副作用、ニンテダニブは下痢の副作用が多くみられます。また、共通の副作用として薬剤性肝障害、食欲不振などが出現します。

これら2つの抗線維化薬は非常に高額で(薬価:ピルフェニドン18万7839円/月、ニンテダニブ39万4464円/月)、長期間治療を継続する必要性があり、患者さんの経済的な負担が問題となります。このため、診断のための精密検査を十分に行い、国の難病患者の認定を受け医療費助成を受ける手続きを同時に進めていくとよいでしょう。

このように、間質性肺炎の診断や治療適応の判断、治療薬の副作用管理など、この疾患の診療には専門的な知識を必要とします。ぜひ、間質性肺炎を専門とする医師の在籍する福井大学病院での診療をお勧めします。