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骨盤臓器脱と尿失禁の最新治療

泌尿器科 福島 正人 助教 横山 修 科長・教授

骨盤臓器脱に対する最新治療

股間を触ったときに、膣(ちつ)からピンポン玉のようなものが飛び出していたら骨盤臓器脱(こつばんぞうきだつ)かもしれません。おしっこの出が悪かったり、失禁したり、挟まったものがこすれて出血したりします。一番の症状は股に何かがある不快感です。

骨盤臓器脱とは膀胱(ぼうこう)や子宮、直腸が膣から飛び出している状態です。子宮を摘出した後も膣の断端が飛び出してくることもあります。

当院では膀胱脱や子宮脱だけでなく、子宮摘出後の脱に対しても治療を行っています。骨盤臓器脱の治療法としてはリングペッサリーでの温存療法や膣壁形成術のほかに、主としてメッシュを使用した手術を行っています。

メッシュを使った手術としては、下垂した臓器を下から支えるTVM手術や、下垂した膣を引き上げる腹腔鏡下膣仙骨固定術(ふくくうきょうかちつせんこつこていじゅつ)(LSC)を行っています。

メッシュを使用した手術は耐久性が高いため再発しにくいといわれています。

近年、腹腔鏡下膣仙骨固定術が主流となってきています。お腹(なか)に4つほどの小さい穴をあけて行う手術です。術後の痛みは少なく、出血も少ないです。膀胱と膣、直腸と膣の間にメッシュを挿入して固定します(図)。続いて膣に固定したメッシュを引き上げて、仙骨と言われる骨盤の靭帯に糸で固定します。このメッシュが下垂する臓器を支えることで脱が治り、手術の翌日には不快感なく歩けるようになります。

図 LSC終了後の状態
メッシュが膀胱と膣、直腸の間に挿入され仙骨にメッシュが固定されている

尿失禁について

初期のものならば骨盤底筋体操や内服薬で治療します。

手術を要するひどい尿失禁に対してはTOT/TVT手術を行っています。これは尿道の裏にメッシュを挿入し、お腹に力を入れても漏れないようにする手術です。

女性泌尿器科外来について

女性泌尿器科外来は、女性に対してのみ診察を行っており、女性医師も在籍して受診しやすい雰囲気となっています。年に数回、骨盤臓器脱と尿失禁の電話相談も行っています。開催日時は新聞に告知されます。受診していただくことが一番ですが、不安な方はその期間に電話してください。

排尿障害や骨盤臓器脱は命に直結する病気ではありませんが、日常の生活に支障をきたす病気です。同じ病気で悩んでいる方は、思っているよりもたくさんいらっしゃいます。勇気を出して受診してください。悩みを一緒に解決しましょう。