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乾癬を起こす元凶をピンポイントで抑える新しい治療

皮膚科 尾山 徳孝 副科長・准教授 長谷川 稔 科長・教授

乾癬とは

みなさんは、乾癬(かんせん)という病気をご存じでしょうか?頻度(ひんど)は人口のおよそ1000人に1人の割合ですので、決して珍しい病気ではありません。

乾癬は、平らに盛り上がった赤い発疹(ほっしん)が全身の皮膚にできます。発疹にはフケのような白い膜がついて、ポロポロと剥れるのが特徴です。また爪の形、指の関節の腫(はれ)や痛みなど、皮膚以外の症状を伴うこともあります。原因は分かっていませんが、生まれつき「乾癬になりやすい体質」をもった方がいるのは間違いないようです。ただし体質をもった方が必ず乾癬を発症するわけではありません。カロリーの高い食生活、喫煙や過度な飲酒、ストレスも乾癬の発症に関係します。最近では、乾癬の患者さんは肥満、高血圧、糖尿病といったメタボリック症候群をもっている割合が高いことが注目されています。実際、肥満の方が適度な減量をしただけで乾癬が良くなったケースも報告されています。

乾癬の新しい治療

多くの皮膚の病気と同様に、「塗り薬の治療」がまずは基本となります。塗り薬はステロイド外用薬、ビタミンD3外用薬が主に使われます。塗り薬のみで効果が不十分な場合は、「紫外線」や「飲み薬」を組み合わせます。また「飲み薬」としては、レチノイド、免疫抑制剤や免疫調節薬が主なものです。

以上の3種類が長らく乾癬治療の中心でしたが、これらの治療で十分な効果が得られない場合や、副作用で内服薬が使えない場合などには「生物学的製剤の治療」という新しい治療が選択できるようになりました。2018年10月現在、7剤が使用可能で、そのうち1剤のみが点滴注射、残りはすべて皮下に注射します。皮下注射の薬の中には自分で注射(自己注射)できるものもあります。

これらの薬は、「乾癬を起こす流れ」を中継する物質をピンポイントで抑えるため、高い治療効果が期待できます。実際、従来の治療法では発疹をコントロールできなかった方でも、この治療を始めて数か月でほとんど出なくなった患者さんもいます。多くの場合、数週間~数か月に1回の頻度で注射を続ければ、良い皮膚の状態を維続することができます。注意すべき点はいくつかありますが、最も重要なのは、投与すると免疫力が下がってしまうことです。

実は「乾癬を起こす流れ」は免疫力にも関係する物質の集まりなので、投与すると体内でおとなしくしていた病原体が増えだしたり、新たに感染しやすくなります。したがって、初回の投与前には十分な検査をして、病原体が潜んでいないかを確認し、その後も定期的な検査を受ける必要があります。しかし過剰に心配する必要はありません。日常生活に大きな制限はなく、手洗い、マスク着用を励行するなど、ごく一般的な感染予防対策をするだけで十分なことがほとんどです。

当院では週2回、乾癬の専門外来を開いています。乾癬の治療に熟知した担当医が診察し、各々の患者さんに合った治療プランを提供します。お気軽にご相談ください。