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経験豊富なスタッフによるAD/HDの最新治療

子どものこころ診療部 水野 賀史 特命助教 友田 明美 部長・教授

AD/HDとは

AD/HD(エーディーエイチディー)(注意欠如・多動症、Attention Deficit/Hyperactivity Disorder)は、年齢につりあわず不注意(集中できない、忘れ物が多い、不注意な間違いが多い)、多動性・衝動性(落ち着きがなくじっとしていられない、我慢できない)が目立ち、それによって学校生活や友人との関係などに問題が生じている場合に疑われます。男児に多く、30人クラスに1~2人ぐらいの割合でいるといわれています。基本的には育て方が原因ではなく、脳内の情報伝達物質の作用が不足していることが原因だと考えられています。

AD/HDの対処法

対処法は大きく分けて2つ、「心理社会的アプローチ」と「薬物療法」があります(図)。心理社会的アプローチには、子どもが落ち着いて集中しやすい環境をつくる「環境調整」、親が子どもの行動を正しい方向に導くための接し方を学ぶ「ペアレント・トレーニング」、子ども自身が感情や行動をコントロールする方法を身に着ける「ソーシャルスキル・トレーニング」などがあります。

薬物療法としては、メチルフェニデート(コンサータ®)とアトモキセチン(ストラテラ®)という2種類の薬があり、いずれも脳内の伝達物質を調整する作用があります。コンサータ®は即効性があり、内服したその日から効果が現れますが、効果の持続時間は約12時間で、主に学校生活など日中に問題が多い場合に使用します。一方、ストラテラ®は効果がみられるまで数週間かかりますが、効果は終日持続し、主に早朝や夜間にも問題がある場合に使用します。一般に多動性・衝動性、不注意いずれも改善することが多く、症状が改善することで、心理社会的アプローチがより有効に働くようになることも期待できます。

当部は子どものこころを専門とした診療部門であり、スタッフがこれほど充実している施設は全国的にもほとんどありません。経験豊富なスタッフが連携し、ペアレント・トレーニング、ソーシャルスキル・トレーニングを含め、前述の治療を一人ひとりの患者さんに合わせて丁寧に行っていきます。

新しい薬の効果と安全性を確かめるための「治験」

当部では、新しい薬の効果と安全性を確かめるため、AD/HDの患者さんにご協力いただき、治験にも積極的に取り組んでいます。これまでグアンファシン(インチュニブ®)、リスデキサンフェタミン(ビバンセ®)の治験を行ってきました。その結果、インチュニブ®は2017年5月から新たに処方が可能になり、今後もさらにAD/HDの治療の選択肢が広がっていく可能性があります。

図 AD/HD の対処法と治験薬