メディカルラリー
急変対応力磨くメディカルラリー
医師・看護師が病棟対抗で競う実践研修
病院内で患者さんの状態が急変した場合の対応力を磨くため、福井大学医学部附属病院は平成21から院内メディカルラリーをスタートしました。医師と看護師でチームを組み、「楽しく学ぶ」をコンセプトに、模擬患者の診察や処置を通じて知識と技術を競う実践研修です。
内容を伏せた異なるシナリオを用意
模擬患者を診察して必要な処置と看護

メディカルラリーは医療チームが模擬患者を診察して、限られた時間にどれくらい的確に治療、ケアをできるかを競う技能コンテストです。院内で起こり得る急変への対応力向上を目的に、平成21年7月新設の臨床研修センターで初開催、平成26年を除き、毎年1回開催しています。
- 医療チームは病棟単位で医師1人と看護師3人の4人で編成します。
- ブースごとに異なるシナリオが用意されています。
- 医療チームは模擬患者を診察して、患者さんに何が起きているかを推察し、心肺蘇生や薬剤投与などの必要な処置や看護を行います。
- インストラクター役の医師と看護師が各ブースで採点します。全ブースを順に回り、総合得点を競います。
- 各ブースでの処置が終わると、その場でインストラクターが良かった点や悪かった点をフィードバックします。

出場者にはシナリオが伏せられています。競技開始前の講義で、シナリオのヒントとなる、急変対応の基本と関連分野のガイドラインの改訂点やトレンドなどについて学びます。これらのシナリオは主に救急担当の医師が作成し、改訂ガイドラインに沿った最新の内容にしています。また、「楽しく学ぶ」をコンセプトに、コスプレ賞を設けるなどの遊び心を取り入れているのも特徴です。
実例に基づいてリアリティーを重視
急変時に頭と体を同時に動かす訓練

救急専門職の屋外でのメディカルラリーは珍しくありませんが、本院では院内のブラッシュアップを目的に行われています。専門外の急変事態はどの病棟でも発生します。一刻一秒を争う場面では、頭では分かっていても体が動きません。頭と体を同時に動かす訓練であるメディカルラリーは、人も設備もそろっている大学病院だからこそできるのです。
また、平成26年に福井メディカルシミュレーションセンターが併設されて、部屋やシミュレーターなどの様々な器材を利用できるようになりました。バイタルサインをモニターでチェックするなど、急変現場をリアルに五感で感じられます。シナリオはリアリティーに重点を置き、救急外来の心肺停止、薬剤性アナフィラキシー、脳卒中などの症例データをベースに作成しています。
事前の予習や練習も質向上に貢献
メディカルラリーは当日の競技だけでなく、それまでの期間において多職種がコミュニケーションをとり、急変対応の知識の確認やスキル練習をおこなうプロセスが重要であると考えています。大会前から始まる教育システムであり、大きな教育効果を実感しています。
院外精鋭チームの初出場が刺激に

メンバーに選ばれると、過去問を踏まえて傾向と対策まで考えるなどしっかり予習や練習を積みます。また、院外から参加するチームもあります。
現場のレベルアップがモチベーション
事前勉強と練習が知識と技術の維持につながり、病棟での急変に若手看護師が自信を持って対応できるようになります。こうして、一次救命措置の質向上に繋がっていきます。